ふと木の上を見上げたとき、本来の木とは違う鳥の巣のような植物があるのを見た経験はないでしょうか?
半寄生植物の一つヤドリギは、他の植物に寄生し、水分や栄養を吸収しながら成長する不思議な常緑低木です。
そこでこの記事では、ヤドリギについて知っておきたい知識を6つのポイントに分けてご紹介したいと思います。
●ヤドリギってどんな木?
ビャクダン科ヤドリギ属のヤドリギは、「宿り木」と表記されるとおり他の植物に寄生しながら成長する興味深い植物です。
寄生する木の葉が落ちてしまっても、ヤドリギだけは常緑性でふさふさとした緑色の葉をしげらせるため、まるで木の上にマリモや鳥の巣があるかのように見えます。
ヤドリギが寄生するのはおもに落葉高木ですが、松のような常緑樹に寄生する姿も見られます。
北日本で見られる寄生先の木は、ナナカマド・ブナ・シラカバ・ナラなど。
また本州中部より南の暖かい地域では、サクラ・ケヤキ・エノキなどでヤドリギが見られます。
葉が落ちてしまった時期は見つけやすいヤドリギですが、夏でもしっかりと他の木に寄生しながら成長を続けます。
ヤドリギの数は1本の木に対して多くて数十個。
大きさはそれぞれ異なりますが、最大で直径1メートルになる個体もあります。
●ヤドリギはどうやって寄生するの?
この街のヤドリギに鳥と人が集う季節 皆さんのモラルに期待してます! #さいたま市 #野鳥 #バードウオッチング #レンジャク pic.twitter.com/TLi5QPlP02
— Urawa no Freedom (@UrawanoFreedom) February 18, 2019
寄生植物の繁殖では、風の力を利用して種などを寄生先に飛ばす方法がありますが、ヤドリギの場合は、ヤドリギの実を食べた鳥(ヒヨドリやレンジャク類)がフンをしたときに、寄生先の枝に種が付着し、その後に発芽することで生命を宿らせます。
ヤドリギの発芽では、根っこのような胚軸と言われるものを伸ばして、寄生先の樹皮の中に胚軸を潜らせます。
そこから水分や栄養分を吸い取ってヤドリギが成長を続けるのが仕組みです。
ただ、ヤドリギ自体も光合成をするため、自分で成長する力も持ち合わせています。
●ヤドリギの特徴は?
細く肉厚な葉と濃い緑色が特徴のヤドリギですが、花を咲かせるのをご存知でしょうか?
開花時期は2~3月で黄色い花を咲かせますが、小さくあまり目立たないこと、高い位置にあることが理由となり、あまり見かける機会はないかもしれません。
雌雄異株で柄を持たず、ガク自体も肉厚で4裂するのが特徴です。
また、ヤドリギは秋になると黄色やオレンジ色の実をならせます。実の中はベトベトとしていて、甘く大きさは直径6ミリ程です。
実の中にある種子は1つで、色は深い緑色をしており平らな形をしています。
葉や枝を乾燥させたものは神経痛やリウマチ、血圧を下げる効果などが期待されるため、漢方の成分としても活用されています。
冬になっても寄生先の木の上で生き延びるヤドリギは、肉厚の葉の中に多くの水分を蓄えられる特性で乾燥に強いのも特徴です。
●ヤドリギは自分で育てられる?
ヤドリギの実をエノキの枝につけてたら発芽してました! pic.twitter.com/MPDxplDAVq
— TreeCafe ツリーカフェ (@Tree_Cafe) April 21, 2020
残念ながらヤドリギは、育てようとしても人工的に育てるのが難しいといわれています。
ただし、ヤドリギの種と寄生する木があれば、チャレンジしてみるのも良いかもしれません。
ヤドリギの種は粘着性のある液果がついているので、寄生先の木の枝や幹にこすりつけておきましょう。
ほどなくして発芽が見られれば、うまくいった証拠です。
●ヤドリギが寄生すると悪影響がある?
能勢市にある「野間の大けやき」推定樹齢千年以上とのこと。一時、ヤドリギが大量に付き、瀕死の状況であったが、付いていたヤドリギを駆除したところ、元気を取り戻したとのこと。カメラマンがやけに多いと思ったら、フクロウが居た。 pic.twitter.com/1JQxf6na7R
— 小林悟志 (@iwana68) May 26, 2018
1本に多くのヤドリギがあると「悪影響はないのかな」と気になる方もいるでしょう。
基本的にヤドリギは寄生先の木を枯らすことはありません。
ただし、発芽から長年経過して大きくなったヤドリギがあると、宿主の寄生された部分の枝が大きく肥大する場合があります。
その後肥大した場所から枝が死んでしまうパターンも見られるため、庭木などで大きなヤドリギや多数寄生しているヤドリギを見つけたら、取り除いておく方がよいとされています。
駆除するさいはヤドリギだけでなく、寄生された枝ごと切断して枯死を防ぎましょう。
●ヤドリギの成長速度はどれくらい?
「寄生先の木の枝を枯死させるほど大きなヤドリギになるまでの年月は?」と不安になるかもしれませんね。
ヤドリギは1年をかけて1節が成長するほど、成長速度は緩やかです。
1節が出ると次の年には二股に別れ、それぞれが1年かけて再び1節をつくり、最終的には球状の形に成長します。
したがって、立派で大きなヤドリギに成長するまではおよそ20~30年もの歳月が必要です。
なお実の液果ができるまでは発芽から5年以上の年月がかかるといわれています。
●さいごに
他の植物の水分や栄養を吸い取りながら生きるヤドリギ。
半寄生という言葉の響きから、あまり良い印象をもたれないこともありますが、ヨーロッパでは縁起木として扱われ、クリスマスの飾りとしても扱われている、昔から多くの人々に愛されている植物です。
自分で育てるのは難しいとされていますが、山や町中でのウォーキングなどのさいは木の上を見上げてヤドリギを探してみてはいかがでしょうか。