苔には「森の中のジメジメした場所にひっそりと生えている植物」というイメージがつきものです。
しかし昨今では鮮やかな緑色や、モコモコした可愛らしい姿が女性や若い人の間で人気となり、容器で苔を栽培する「苔テラリウム」などでメディアに取り上げられる機会も多くなりました。
苔は今まで日本庭園で多く活用されていましたが、現在では洋風の庭でもグランドカバーや目地埋めなどで使われています。
今回は、苔の魅力やおすすめ品種を3つご紹介しましょう。
苔ってどんな植物?
シダ植物や藻などとよく間違われる苔。植えたつもりはないのに「知らない内に庭の片隅に生えていた」なんてことはありませんか?
苔が他の植物と決定的に異なるのは「維管束(根)をもたない」点です。
一般的な植物は根から水分や栄養を吸収して生長をしますが、苔は葉や茎を利用して水分を吸収しています。
生えている苔を引き抜くと、茎の下に根のような形をしたものがついていますが、その正体は「仮根」と言われる地面(土・木・岩など)に付着するための組織。
苔は吸収した水分と日光を利用して光合成をおこない生長を続けているのです。
苔は姿形やその特徴から「蘚類・苔類・ツノゴケ類」の3つに分類されます。
また一年草と多年草にも別れ、多年草の中には約80年生き続けている寿命が長い個体もいます。
苔はどうやって増える?
苔は種類によっては雌雄異株と、雌雄同株に分かれます。
一般的な苔の増え方は受精をした雌の株から出される「胞子体」によるもの。
私たちが知らない内に苔が生えているのは、風や虫の力を利用して胞子体が別の場所に飛ぶのが原因です。
そのため、胞子体の着陸した土壌環境が苔の好むものであれば、葉が芽吹いて増殖を続けます。
現在日本国内で確認されている苔は1700~1800種類。
全ての苔が同じ環境を好む訳ではなく、日の当たる場所が好きなものもいれば、日陰が好きなものもいるなど、苔の種類によって適応する環境はさまざまです。
苔の増え方は胞子体の他にも、クローン(無性芽)を作る方法やちぎれた一部(葉など)から増殖をする方法などがあります。
スギゴケ
スギゴケの名前は「小さな杉」のような姿に由来しています。
一口にスギゴケと言っても一種類の苔を指している訳ではなく、スギゴケ科スギゴケ属に属する「オオスギゴケ」や「ウマスギゴケ」など約400種類以上の苔の総称として使われている言葉です。
苔庭では一番多く使われ、日本庭園におけるスタンダートな苔として知られています。
特徴は葉が硬く、垂直に真上に向かって伸びること。
自然界では湿った土壌の日のあまり当たらない場所を好み、腐葉土や岩場の多い場所に群生します。
1年に3~5㎝伸びるスギゴケは、放置しておくと20㎝位まで伸びることも。
伸びすぎたスギゴケを放置しておくと、下から新しい苔が生えづらくなったり景観が損なわれたりするので、育てる時は真夏と真冬以外の時期に、適度なカットや間引きをして管理を続けましょう。
水やりは朝か夕方の涼しい時間帯におこなってください。
ジャゴケ
大きな葉が特徴のジャゴケは、葉の表面が蛇の鱗のような見た目をしているので「蛇苔(ジャゴケ)」と名付けられた所以があります。
見た目の特徴から「ジャゴケは苦手」とする人も多い一方、ミニ盆栽やテラリウムなどで活用されることも。
指で葉の表面を強く擦ると、ハーブや松茸のような香りを感じられるのも魅力の一つでしょう。
ジャゴケは湿地の半日陰になるような場所を好み、苔の仲間の中では乾燥に強い部類に入ります。
ゆっくりと生長するので、葉の表面が乾燥してきたら水を与える程度の管理で育成が可能です。
記述のスギゴケに反して種類は少なく、世界中には7種類、日本国内には「タカオジャゴケ・オオジャゴケ・ウラベニジャゴケ」の3種類しか存在していない貴重な苔とされています。
スナゴケ
スナゴケは群生すると星が集まっているように見えるため、「綺麗で美しい苔」として人気があります。
一見スギゴケと見た目が似ていますが、スナゴケはスギゴケよりも「小さい・濃い緑色をしている・触れると硬い」のが特徴です。
乾燥に強く、ある程度の水分が与えられていれば直射日光や積雪にも耐える性質を持つため、日本全国のいろいろな場所で育てることができます。
苔のイメージにそぐわずあまり水分量が多い土壌は苦手とするため、特に鉢やテラリウムで育てる時は乾燥気味に育てて、水やりは朝夕の時間帯にたっぷりな量を与えると上手く育てられるでしょう。
地植えで管理をする時は降雨のみで十分です。
空気が乾燥すると一時枯れたように見えるので水を与えたくなりますが、土壌が蒸れてしまうので雨が降るのを待ちましょう。
降雨が全くない日が続いた場合は、日が出ていない時間帯に水やりをしてください。
世界中に存在している苔は約2万種類もあると言われています。
苔が育ちやすい環境や成長速度、増え方も種類によって違うところが興味深いですよね。
どんな方法であれ、苔を育てるには品種によって異なる性質や特徴を知ることが一番重要です。
色々な苔を栽培して、お気に入りを是非見つけてみましょう。